昔々―
 中国の人里離れた山の奥に大層可愛らしい目をした男の子―
「うさぎちゃん」が二人の若者の大きな愛に包まれてとても幸せに暮らしておりました。
「よう うさぎ、今日もイイコにしていたか?」
「良い匂いですね。今夜は青梗葉の炒め物ですか?うさぎちゃん」
二人の美しい若者は交互にうさぎちゃんを抱きしめます。

 昔ー
青く美しい髪を持つ楊ゼンは仙人界の王子でした。
日に焼けた黄金色の肌を持つ姫発は人間界の王子でした。
二人はいつもどうやったら二つの世界が一つになれるのか話し合っていました。
 
ある日、二人の目の前に長い長い川を渡って大きな大きな桃がひとつ流れてきました。
楊ゼンが持っていた三仙刀を使って割ってみると中から小さな男の赤ん坊が出てきました。
『うさぎちゃん』です。

 二人は時を止めて、うさぎちゃんを大切に育てました。
うさぎちゃんの傍にいるだけで、二人はとても幸せでした。
もちろんうさぎちゃんも、そんな二人に囲まれて、本当に幸せでした。

 けれどーうさぎちゃんは考えました。
「ああ、この山の上や山の下はどんな世界なのかのう」
世界はもっともっと広がっていて、もっともっと素敵な事が溢れているに違いないと。
そしてとうとう、うさぎちゃんは山を飛び出してしまったのです。
その先に、どんな過酷な運命がうさぎちゃんを待っているかも知らずに…